| (2) 黄色い星はトトの気持ちを確認すると、静かにトトの周りを旋回しはじめた。 いつの間にか他の星たちも集まって、光はシャワーになる。 星たちは徐々にスピードを増し、しまいには個々の判別も出来ない光の空間に トトの身体は包まれた。 眩しくて目を閉じる―― 「人間になったら丘の上の屋敷へ行きなさい。メリーというマダムがいるわ。 今夜からあなたはメリーの息子。彼女も昔、人形だったの。」 トトは丘の上の屋敷を思い浮かべた。ネルの部屋の窓からも見える。 「メリーの家だね。あそこならネルの家も、そう遠くないや。 いつでもネルと遊べるね。」 「ひとつ云っておくけど、トト。あなたは人間になったらおもちゃだった頃の記憶を 失くしてしまう。そうしないと人間の世界で適応ができないの。メリーもそう。彼女は トトを本当の息子として受け入れるわ。あなたもメリーをママだと思うでしょう。」 それを聞いたトトの表情が途端に険しくなった。 「ネルを忘れるって?」 「そう、ネルもあなたを忘れるわ。あなたの願いは人間になることでしょう?」 トトは何だか胸にわだかまりを覚えた。何かが違う。 トトは人間になりたかったのではない。ネルのそばにいたかったのだ。 忘れるなんて、トトにはできない。 「星さん、ごめん! 僕はおもちゃのままでいい。人間になんかなりたくない。」 「……本当におもちゃのままでいいの?」 「いいよ、僕はネルのそばにいたいんだ。人間になりたいわけじゃない。」 「願いを叶えられるのは、一回限りよ。もう二度とこの〈星宿りの木〉を見つける ことは出来ないけど、それでもいいの?」 「僕はここに星さんを連れてきてあげただけだ。もうすぐ夜が明ける。早く木箱の 中へ帰らなきゃ。」 トトの言葉を聞くと、星たちは一瞬真っ白に閃光し、再び辺りは闇に包まれた。 トトは木箱の中へ帰されている。星たちのせめてものお礼だろう―― 次の日ネルは、かねてから欲しがっていた最新型のロボットを手に入れること ができた。誕生日のお祝いに、パパとママから貰ったのだ。 散々遊んだあと、ネルは木箱に入っていたガラクタを全部棄てると、その中へ 大事にロボットをしまっておいた。 END (2) 物語へ |